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東京高等裁判所 平成5年(行コ)79号 判決 1993年11月09日

イギリス国

ケンブリツジシアー シービー七 四デイーテイ イーリ

エンジエルドウローブ ケンブリツジシアー ビジネスバーク

控訴人

ケンブリツジ ライフ サイエンシズ ビーエルシー

右代表者

レスリー ジエイムズ ラツセル

右訴訟代理人弁護士

高橋早百合

東京都千代田区霞が関三丁目四番三号

被控訴人

特許庁長官

麻生渡

右指定代理人

山田知司

森和雄

小野田猛

小林孝歳

主文

一  本件控訴を棄却する。

二  控訴費用は控訴人の負担とする。

三  この判決に対する上告のための附加期間として九〇日を定める。

事実及び理由

第一  当事者の求めた裁判

一  控訴人

1  原判決を取り消す。

2  被控訴人が、昭和六三年七月四日付けをもつてした、控訴人の出願に係る国際特許出願PCT/GB八七/〇〇三六五に関する特許法一八四条の五第一項の規定による書面並びに同法一八四条の四第一項に規定する明細書、請求の範囲及び図面の日本語による翻訳文の不受理処分を取り消す。

3  訴訟費用は、第一、二審とも被控訴人の負担とする。

二  被控訴人

主文と同旨

第二  事案の概要は、原判決の「第二 事案の概要」のとおりである(ただし、一六頁五行「スイス連邦では四七条、」の次に「英国では特許規則一一〇条、」と付加する。)から、ここにこれを引用する。

第三  本件訴えは、控訴人の所定翻訳文提出の遅滞については特許協力条約二四条(2)及び四八条(2)(b)の適用があるので、本件国際出願は、特許法一八四条の四第二項により取り下げられたものとみなされる効果は直ちには生じないとして、所定翻訳文提出の遅滞により本件国際出願は取り下げられたものとみなされることを理由に被控訴人がした本件不受理処分の違法を主張して、その取消しを求めるものである。

その控訴人の主張に理由があるか否かはともかくとして、それに理由があり、本件国際出願は控訴人の所定翻訳文提出の遅滞によつては取り下げられたものとみなされる効果は直ちには生じないとして、本件不受理処分が取り消されれば、被控訴人はその判断に拘束され(行政事件訴訟法三三条一項)、所定翻訳文を含む本件各書面を受理するとともに、本件国際出願は係属しているものとして、爾後の手続を進める義務が生じるものであるから、本件訴えは、その利益に欠けるところはない。

控訴人の主張に理由がなく、本件国際出願は控訴人の所定翻訳文提出の遅滞により取り下げられたものとみなされたものとすると、本件訴えは、結果的には、本件国際出願の係属がないにもかかわらず、その審査手続上必要とされる本件各書面の受理を求めて、被控訴人のした本件不受理処分の取消しを訴求したことになるが、それは、本案において主張された本件不受理処分の違法事由に対して判断が加えられ、その主張が認められなかつた結果にすぎず、この点を捉えて、本件訴えの利益を否定することはできない。

したがつて、本件訴えは、その利益を欠き、不適法であるとしてこれを却下した原判決は違法である。

第四  ところで、本件記録によれば、原審は、本件不受理処分の取消事由の存否についても実質的に審理を尽くした上、判決の「第三 当裁判所の判断」において、本件訴えは、その利益を欠き不適法であるとする理由を示すに当たり、本件国際出願につき控訴人が特許法一八四条の四第一項所定の国内文書提出期間経過後に所定翻訳文を提出したことについて控訴人の主張する特許協力条約二四条(2)及び四八条(2)(b)の規定の適用がないことを同条約の諸規定や憲法九八条二項及び特許法の諸規定を参照して認定判断しており、これは本件不受理処分の取消事由の存否に関する認定判断にほかならないから、この点についてさらに原審において格別の審理判断を経なければならない実質的理由は存せず、当審において原審の認定判断に基づいて本案の裁判をすることができるというべきである。

そこで、本件不受理処分が違法であるとしてその取消を求める控訴人の本訴請求の当否について判断すると、前記翻訳文の提出遅滞につき特許協力条約二四条(2)及び四八条(2)(b)の規定の適用はなく、特許法一八四条の四第一項所定の提出期間経過後に提出された前記翻訳文を不受理とした被控訴人の処分が正当であることは、原判決の「第三 当判所の判断」中の二八頁八行ないし三五頁三行(ただし、二九頁三行ないし六行を除き、三四頁七行の次に、「そして、控訴人の引用する前記諸規定以外の特許協力条約の条項の存在や同条約の締結国が所定の期間内に手続がなされなかつた場合の救済規定を設けていることは、前記判断に何ら影響するものではない。」と付加する。)のとおりであるから、ここにこれを引用する。

したがつて、控訴人の本訴請求は理由がないからこれを棄却すべきものであるが、その結論は原判決よりも控訴人に不利益となり、民事訴訟法三八五条の規定に抵触することとなるので、原判決を維持して控訴を棄却するにとどめることとする。

第五  よつて、本件控訴を棄却し、控訴費用の負担及び上告のための附加期間を定めることにつき、行政事件訴訟法七条、民事訴訟法九五条、八九条、一五八条二項の規定を各適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 竹田稔 裁判官 成田喜達 裁判官 佐藤修市)

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